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シングルウィンドウとは?-製造業にとっての有用性と可能性-(1/2)

シングルウィンドウは、各国の貿易手続きを、単一の総合窓口で取り扱うことによる、輸出入手続きの円滑化を目的としています。各国のシングルウィンドウが、連結されることで、強力な仕組みが構築できます。本コラムではASEANの先駆的な例を紹介します。

シングルウィンドウとは?

「シングルウィンドウ」という言葉は、兼ねてからよく聞く言葉となっていると思いますが、ロジスティックスに直接関わっている方々は別として、それがクローズアップされて議論の対象となることは、めったにありません。

図1:各国のシングルウィンドウの一般的構造と、国を跨いだ相互連携の概念図<図1:各国のシングルウィンドウの一般的構造と、国を跨いだ相互連携の概念図>


確かにシングルウィンドウという言葉そのものは、図1のように、貿易手続きが単一の総合窓口で取扱われることにより、そこにアクセスし、当該貨物のデータを入力すれば、必要となるほとんどの貿易関連手続きに関するデータがシステム的に使い回され、手続きの結果も担当当局から同じシステムを通じて通知されるという、往きも返りも情報のルートが一本化された状況を表現した言葉です。従って、国内輸出入手続業務を対象としたネーミングと言えます。 企業の中でもロジスティック関連の部門に通関士が存在し自社通関するケースを除いて、多くの企業では、貿易手続業務を外部専門業者等に委託しています。そのため、シングルウィンドウへの関心が、今一つ高まらないという状況にあると推測されます。

日本のシングルウィンドウは、NACCS

日本のシングルウィンドウはNACCS(Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System)です。第5次更改が行われて以来、輸出入の荷主もNACCSの利用者となり、貨物のハンドリングを行うフォワーダー等への貨物積卸業務に係る指図がNACCSを通じて行えます。即ち従来、メッセージの宛先毎に個別に、システム連携、メール添付等のインターネット利用、文書郵送で連絡していた指図内容を、一元的にNACCSに伝送しておけば、後続業務はオリジナルのデータがフォワーダー等により使い回されて進行し、マンパワーの節約など種々の利点が得られる状況となっています。


図2:海上貨物の輸出入等関連手続イメージ
<図2:海上貨物の輸出入等関連手続イメージ 出典:輸出入・港湾関連情報処理センター株式会社>

シングルウィンドウの利点:貿易取引文書の国際データ交換による「貿易自体の円滑化」への活用

  1. シングルウィンドウの利点は大きく分けて二つ有り、一つは上述の通り、貿易手続きの円滑化であり、もう一つは各国のシングルウィンドウの連結により、貿易自体の円滑化のための強力なネットワークを構築する可能性を持つことです。海外の販売拠点、生産拠点、部品・原材料調達先等との取引には、既に多くの企業が独自の国際ネットワークを構築し、貿易文書を電子データとして伝送の上、生産管理、販売管理等には実質的に、これらのデータが活用されています。しかし、相手国の通関制度等の制約のために貿易手続用として書面を送付するなどの別途処理が行われるケースも多いと推測しています。
  2. 図3:貿易手続きにおける電子ネットワーク利用上の課題
    <図3:貿易手続きにおける電子ネットワーク利用上の課題>

  3. しかし、そのような相手国でも、実は国内でシングルウィンドウが稼働しているというようなことも多いと考えられます。図3のように輸出側、輸入側のシングルウィンドウが別々に稼働し、その間を貿易取引文書データが当事者間のプライベートなネットワークで伝送されている場合、輸出入両国の貿易手続きシステムにシームレスにつなげるのは困難なケースが多いと考えられます。一方、もし両国のシングルウィンドウ同士が相互に接続されていれば、プライベートなネットワークの代わりにシングルウィンドウ間の公的なネットワークを活用する可能性が出てきます。輸出通関手続から輸入通関手続に至る全行程における多くの部分で、一度入力されたデータが使い回されることによる貿易取引全体の効率化が期待できます。また、公的なネットワークで代用することで、プライベートネットワークを維持する費用が節減される可能性もあります。

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渡邊 浩吉 氏
渡邊 浩吉 氏
三菱商事株式会社OB。
2011年から日本貿易関係手続簡易化協会(JASTPRO)のシニア・アドバイザーとしてその調査事業の委嘱を受け、ASEANシングルウィンドウ、電子インボイス、アフリカの電子貿易などの調査を請負うと共に、国連CEFACTに係る日本の各種委員会の委員を務める。国連ESCAP、APEC、ASEAN等、国内外で広く講演を行う。